山際淳司さんが野球選手たちのことを書いた「ダグアウトの25人」という本があります。
最初に「プロローグ」と題された前書き的な文章で、たいていのひとは「ベンチ」と呼ぶものを自分はなぜ「ダグアウト」と呼ぶのかを説明しています。
古い写真を見た印象だったり、他のスポーツとくらべたちがい。
広島カープが優勝を決めた試合でホームランを打って戻ってきた山本浩二選手。
ノックアウトされたピッチャー、三振したバッター。
ダグアウトにある選手たちの喜び、苦しみ。
そういったことを4ページ以上つかって書いたあと、山際さんは、こう書いています。
「それを〈ベンチ〉という平板な言葉でいってしまうのは、どうにも惜しいような気がするのだ。」
小さなことにこだわって、こだわる理由までもひとつの作品のようにしてしまっています。
この本では25人の選手たちについて書かれているんですけど、ハッキリした基準があって選んだわけではない、ということも書かれています。
そういうことを言ったあとに、こんな文章に続きます。
「彼らはみな、ダグアウトに腰をおろすにふさわしい男たちだ。」
前書きでこんなにかっこよかったら、この先を読むのが楽しみになるような文章です。
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