ある寒い日、部屋にあった2つの花苗を、ひっそりと庭のすみに植えかえた。
日当たりが最悪の庭なので、それは捨てたというのに等しい。
買ったときは喜んでムダに写真を撮ったりしてたけど、やたら虫が出てきてイヤになって2ヶ月で挫折してしまった。
花を買ったのは、12月のわりには暖かく感じる日だった。
部屋の大そうじをしたあとで、妙に気分がたかまっていた。
ここに花なんか置いちゃったら楽しいかもと妄想がふくらんだ。
ヨーカドーでパンを買うついでに、横にあるホームセンターのガーデニング・コーナーに行ったら予想以上の広さ。
花が多すぎて僕にはどれがいいのか分からない。
とりあえずフラフラと歩きまわる。
店員のおじさんが、鉢を手にとって花の手入れをしていた。
ハサミで葉を切り落とす動きに職人ワザの美しさがある。
おじさんは花のことは何でも分かってるひとなのだろう。
僕は2つの花苗を買ったんだけど、おじさんに心の中まで見抜かれてるように思えた。
「あいつ、何にも分かってないくせに買っていったな」
なんていう感じで。
そんなおじさんでも、僕が2ヶ月で花に挫折するとは見抜けなかっただろう。
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