2016年4月11日月曜日

吉行淳之介さんの落ち着きのある例え


何かを例えて表現するときに、もとのネタより例えのほうが弱かったら、あまりおもしろくないですよね。
例える意味すら、ないかもしれません。

吉行淳之介さんの「やややの話」という本に「財布もしくは蟇口」というエッセイがあります。

この中で、ある男のひとが結婚前はサイフなんか持たずに気軽にお金を使っていたけど、結婚したら奥さんがきびいしのでサイフに入れて無駄遣いを減らすようにしたという話が出てきます。

お金を立ち止まらせる役目がある、みたいなことが書かれたあと、こんな文章に続きます。

「つまり、自殺の名所の崖縁に、
『ちょっと待て』
と立札が立っているのと同じ効果を、財布が与えていることになる。」

落ち着きのある文章ですけど、例えのスケールが大きいですね。
お金を使うことが自殺になっちゃってます。

このあとさらに、結婚と自殺をつなげるようなニュアンスの文章も出てきたりして、吉行さんのテクニックが光っています。

自殺の名所にホントにそんな立札があるのかは分かりません。

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