2015年12月7日月曜日

矢作俊彦さんが元高校生ピッチャーの実力をあやふやに説明した文章


矢作俊彦さんの「ライオンを夢見る」というエッセイ集があって、海外での出来事がおもしろく書かれています。

その中で、矢作さんがスペインにいるときに偶然、知り合いの小説家と会います。
最後まで読んでもその小説家が誰なのかは分かりません。

名前は書かれていなくて、そのひとのことはずっと「甲子園崩れ」と書かれているんです。
偶然会った場面でその小説家について、高校で野球をやっていてピッチャーだったと、軽く説明があります。

どのぐらいの実力のピッチャーだったのか、矢作さんはこう書いています。

「もし肩を壊さなかったら、近鉄の2軍で4勝ぐらいはできたかもしれない。」

近鉄というプロ野球チームがあったことは説明の必要ないですよね。

2軍とはいえプロで4勝するってけっこうすごいことだと思うんですけど、むしろけなしているように感じられるフレーズです。
実際に4勝したわけでもないし。

大きな活躍はしなかったものの、そこそこのひとだったという。
そんなハッキリしない感じを伝えるために、このような表現が必要だったのでしょうか。

矢作さんの文章は、そのあとこう続きます。

「肩を壊したので、午後六時から酒を飲める権利を手に入れ、四六時中それを行った。」

内容はやっぱりけなしてるようですけど、表現がかっこいいです。

このひとは、ちょっと出てくるだけのひとなんですけどね。
こんな文章で紹介されて、うらやましく思えます。

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