2015年12月18日金曜日

草野進さんがプロ野球選手を語る文章にとつぜんエレベーターの淑女


草野進さんの「世紀末のプロ野球」という本に、野球選手と帽子について書いた文章があります。

グラウンドでは帽子をかぶったままでいてほしいと主張する草野さん。

勝ったチームのピッチャーが帽子をとってハイタッチしたり、ホームランを打った選手が守備位置に走りながら帽子をとってファンにおじぎしたり、そういう姿に対しては不満なようです。

草野さんの場合、怒りかたにも品があって、こんな文章が出てきます。

「エレベーターに淑女と乗り合わせたわけではなくまぎれもなく球場で衆人環視のもとにあるのだから、彼らはどこまでも正装をまもってほしい。」

最初の「エレベーターに淑女と…」というのがおもしろい。
実際に見たことはないですけど、外人のひとにはそういうマナーがあるような印象です。

男が帽子をとるのはそういうときなんだと示しておくことで最後の「正装をまもってほしい」が活きてる感じがします。

草野さんのこの文章のタイトルは「知らぬ間に選手の頭から帽子が離れている試合ほど人を興奮させる」で、実は帽子がとれちゃう姿を見るうれさを書いている文章なんです。

長嶋さんが空振りしたときや、外野手がファインプレーをしたときに帽子が飛ぶ姿について語っていて、先ほど引用したあたりはその前フリにもなっています。

きっとこういう工夫が、説得力のある文章とか言い回しとかをつくるんだろうなと思います。

見習いたいポイントですけど、野球選手の帽子からエレーベーターの淑女を連想できるようになるには、そうとうな訓練が必要な気もします。

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